2010年01月24日
鉄の塗装
たしか昨年8月頃だったと思います,
「DIY外壁塗装」のMさんから,久しぶりにお電話がありました。
Mさんのお家はガケの上に建っていて,
ガケ下に駐車場があるのですが,
その駐車場のところに,鉄骨で物置とデッキを作ることになった,
ついては,曽根塗装店なら鉄骨に何を塗るか,というお尋ねです。
なんでも,ご近所で同様のものを増設した先駆者がいて,
錆びちゃって毎年塗らなきゃなんないから
鉄骨で作るのはやめたほうがいいよ
と,思いとどまるように言われたそうです。
しかし,Mさんは,
いや,ちゃんと塗装すればそんなことはない!
ということを証明できるような仕様が良い
オレ,もう曽根塗装店だし(爆)
と熱く語るのです (^-^)
で,私はなんと答えたかというと,
塗装ではなく溶融亜鉛メッキ(いわゆるドブ浸け)にすること
を強くおすすめしました。
先々のメンテナンスの手間まで考えたら,残念ながら塗装は,
50年くらいはそのままでOKな溶融亜鉛メッキには勝てません。
昔々は鉄塔に使われるくらいだったと思いますが,
15年くらい前から(?)は,マンションの非常階段や
立体駐車場など,民間の建物でも見かけるようになりました。
じゃあそういう見積もりしてもらいます,ということで
とりあえず落着しました。
しかし,しばらく経って,またお電話が。
プラス100万って言われて,予算的にムリ。
とのこと。
そして,
塗装なら高い材料でも100万もかからないでしょ?
と,おっしゃるのでした。
確かに,自分で塗るなら,手間はタダです。
う〜ん,でも,ホントにイイんですか?タイヘンですよ。
てな感じで話を始めて,第二のDIY塗装が始まりました。
以下,オレならこう塗る的な住宅の新設鉄骨塗装の解説と
Mさんから送られた写真です。
いまだに「■■の一つ覚え」のように新築の図面に書かれている
「シアナミド,SOP」なんていう,くだらない仕様とは
全く違います。
---------------------------------------------------
なんでかというと,鉄骨屋さんは錆止塗料を指定しない限り,
ものすごぉ〜〜〜〜く安〜〜〜〜い錆止塗料を使うからです。
もし,塗料を指定するとしても,ペンキ屋じゃないので,
適正な希釈率で望ましい膜厚にしっかり塗装してもらえる確率は
たぶんヒジョーに低い。
鉄骨屋さんがペンキ屋を工場に呼んで,
塗装職人に塗装してもらうパターンもあるらしいですけど
いいかげんな塗装職人が来たら かんたんにアウトです。
だったら,最初から自分でやったほうが絶対確実。
で,無塗装で搬入され組み上がった様子です。
↓

石油缶(16L)でラッカーシンナー買って,
それでびしょびしょにした布で拭く。(すごく臭いし,火気厳禁)
なんでかというと,鉄骨の表面には錆の発生を防ぐため,
たいてい油が付けてある(塗ってある)からです。
最初にこれをキッチリ落としておかないと,
どんなに高級な錆止塗料を塗っても密着できません。
しかし,民間の工事の場合,おそらく,
これは結構おろそかにされている気がします,経験上。
(だから塗料の密着が悪く,剥がれやすい)
理想としては,サンドブラストで黒皮(酸化皮膜)の除去
と同時に目荒らししたいわけですが,現場では無理です。
よって,80番のサンドペーパーでがしがしこすってキズを付ける。
「キズを付ける」=「表面積が増える」ので,
上に塗る塗料の密着が劇的に向上します。
これは,民間の工事では行われていないと思います,経験上。
(だからさらに,劇的に剥がれやすい)
この写真は目荒しの前と後。
↓


「カーボマスチック15/ジャパンカーボライン社」を使用。
この錆止塗料は約10年前,新潟県の米田塗装さんに教えてもらい,
曽根塗装店の現場では過去に2回だけ使いました。
・最下等の錆止塗料だとキロあたりたぶん200円くらい
・手軽で乾燥が早く,“エポ”というイメージが良いので
昨今ペンキ屋の標準になりつつある
弱溶剤1液形エポキシ錆止塗料だと500円くらい
(「1液ハイポンファインデクロ」「エスパーワン」
「ザウルスEX」など)
・曽根塗装店の標準品の2液形で1000円前後
(「エポオールマイルド」「エポックマイルド#2000」)
で,「カーボマスチック15」は2000円を超えます。
(アメリカ製ということもあるかもしれませんが)
しかも,まるで防水材のように ねばねばどろどろ,
だから,仕上がりがゴテゴテ,
その上,2液を混合してから使えなくなるまでが2時間,
さらに,塗り重ねが出来るまで24時間,
おまけに,開缶したら3ヶ月以内におシャカ。
意地でも長持ちさせたいからこの際 赤字になってもいい,
くらいの玉砕精神が無いと使えません,私的には。
でも,厚い。
塗るというよりは,刷毛で持って行って置いていきながら均す,
そんな感じのネタですから。
注意点として,以上【2】〜【4】は当日以内にやること。
塗る前に雨が降ったり夜露に当ったりすると,
(厳密に言えば空気中の水分でも)錆が生じてしまいますから,
脱脂や目荒らしをしたら当日以内に塗膜で覆っておくのが原則です。
全体を【4】まで1日でやるのが不可なら,
1日で出来る分ずつ,分割してすすめる。
それから,ローラー塗りじゃなく,ハケ塗りすること。
但し,ローラーでたっぷり配ってハケで均すならOK。
早く終わらせたくて無闇にローラー使いたがるやつがいますが
ローラー塗りだと塗膜が凹凸になり,凹部が薄いからダメ。
(鉄橋の塗装ではローラーNG,ハケ塗り限定の場合があるそうです)
「カーボマスチック15」1回目「アルミニウム」の塗装中。
↓

もちろん,またネバネバな「カーボマスチック15」です。
粘度が高いだけに,かすれやすいし,
1回塗りだと,エッジがどうしても薄いので2度塗りします。
「カーボマスチック15」には何色か色の種類があるので,
1回目と2回目を色違いにした方がわかりやすいでしょう。
「カーボマスチック15」の2回目「レッド」
(というよりはメタリックピンク)の塗装後。
↓

通常,エポキシ樹脂塗料は紫外線に弱いです。
曽根塗装店では下地が透けるとわかるように
わざと なるべく白に近い錆止塗料を使うので,
国産の錆止塗料は上塗りせずに放置すると徐々に黄変してきて,
紫外線にやられてるんだなー,と実感できます。
しかるに,「カーボマスチック15」はエポキシ樹脂塗料のくせに
上塗兼用という変わり者で,そのままでもOKなんです。
なので,上塗は省いても構わないとは思いますが,
同社の強溶剤2液形ウレタン樹脂塗料「カーボライン134HS」を
1回だけ上塗。(ウレタンだけど弱2シリコンよりはるかに高価)
米田さんに相談したら,上塗がシルバーなら,
1回でも透けないで仕上がるだろうというので,上塗1回で決定。
上塗はまだMさんから写真が送られてきていませんが,
そろそろ終わってる頃ではないかと思います。
---------------------------------------------------
さて,今の住宅ではトタン以外,
外部に鉄が使われていることはほとんどありませんが,
希にベランダや階段などで露出鉄部の塗装がある場合,
需要と供給のバランスで育まれた【世間並み仕様】では前記の通り
脱脂はテキトー,目荒し 無し,
ただなんとなく色が付く程度の安物の錆止塗料を1回。
その上に,SOPとか弱溶剤1液ウレタン樹脂塗料みたいな
これまた安物の上塗塗料(SDスーパーホルスとかHi-CRとか
1液ファインウレタンとか1液マイルドウレタンとかエコレタンとか)
を1回だけ塗って,おしまい。
まあだいたいそんなところが定番です。
雨ざらしだったら,錆が出るまで,もっても3年でしょう。
で,【1】〜【6】の仕様だと,
たぶん【世間並み仕様】の7倍以上の厚みが付きます。
塗る前に脱脂・目荒らしが しっかりしてあれば,
自然に剥がれるということはまず有り得ないし,
ぶつけて剥げない限りは10年経っても錆は出ないと思います。
---------------------------------------------------
ちなみに,
【世間並み仕様】の鉄骨をもつように塗替えろといわれたら,
害にしかならない,しょーもない既存塗膜を一旦全部剥がすしかない
というのが私の経験的結論です。
リセットしたあとに,私の塗膜だけで包みたい。
「DIY外壁塗装」のMさんから,久しぶりにお電話がありました。
Mさんのお家はガケの上に建っていて,
ガケ下に駐車場があるのですが,
その駐車場のところに,鉄骨で物置とデッキを作ることになった,
ついては,曽根塗装店なら鉄骨に何を塗るか,というお尋ねです。
なんでも,ご近所で同様のものを増設した先駆者がいて,
錆びちゃって毎年塗らなきゃなんないから
鉄骨で作るのはやめたほうがいいよ
と,思いとどまるように言われたそうです。
しかし,Mさんは,
いや,ちゃんと塗装すればそんなことはない!
ということを証明できるような仕様が良い
オレ,もう曽根塗装店だし(爆)
と熱く語るのです (^-^)
で,私はなんと答えたかというと,
塗装ではなく溶融亜鉛メッキ(いわゆるドブ浸け)にすること
を強くおすすめしました。
先々のメンテナンスの手間まで考えたら,残念ながら塗装は,
50年くらいはそのままでOKな溶融亜鉛メッキには勝てません。
昔々は鉄塔に使われるくらいだったと思いますが,
15年くらい前から(?)は,マンションの非常階段や
立体駐車場など,民間の建物でも見かけるようになりました。
じゃあそういう見積もりしてもらいます,ということで
とりあえず落着しました。
しかし,しばらく経って,またお電話が。
プラス100万って言われて,予算的にムリ。
とのこと。
そして,
塗装なら高い材料でも100万もかからないでしょ?
と,おっしゃるのでした。
確かに,自分で塗るなら,手間はタダです。
う〜ん,でも,ホントにイイんですか?タイヘンですよ。
てな感じで話を始めて,第二のDIY塗装が始まりました。
以下,オレならこう塗る的な住宅の新設鉄骨塗装の解説と
Mさんから送られた写真です。
いまだに「■■の一つ覚え」のように新築の図面に書かれている
「シアナミド,SOP」なんていう,くだらない仕様とは
全く違います。
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【1】無塗装で引き渡してもらう
なんでかというと,鉄骨屋さんは錆止塗料を指定しない限り,
ものすごぉ〜〜〜〜く安〜〜〜〜い錆止塗料を使うからです。
もし,塗料を指定するとしても,ペンキ屋じゃないので,
適正な希釈率で望ましい膜厚にしっかり塗装してもらえる確率は
たぶんヒジョーに低い。
鉄骨屋さんがペンキ屋を工場に呼んで,
塗装職人に塗装してもらうパターンもあるらしいですけど
いいかげんな塗装職人が来たら かんたんにアウトです。
だったら,最初から自分でやったほうが絶対確実。
で,無塗装で搬入され組み上がった様子です。
↓
【2】脱脂を行う
石油缶(16L)でラッカーシンナー買って,
それでびしょびしょにした布で拭く。(すごく臭いし,火気厳禁)
なんでかというと,鉄骨の表面には錆の発生を防ぐため,
たいてい油が付けてある(塗ってある)からです。
最初にこれをキッチリ落としておかないと,
どんなに高級な錆止塗料を塗っても密着できません。
しかし,民間の工事の場合,おそらく,
これは結構おろそかにされている気がします,経験上。
(だから塗料の密着が悪く,剥がれやすい)
【3】目荒しを行う
理想としては,サンドブラストで黒皮(酸化皮膜)の除去
と同時に目荒らししたいわけですが,現場では無理です。
よって,80番のサンドペーパーでがしがしこすってキズを付ける。
「キズを付ける」=「表面積が増える」ので,
上に塗る塗料の密着が劇的に向上します。
これは,民間の工事では行われていないと思います,経験上。
(だからさらに,劇的に剥がれやすい)
この写真は目荒しの前と後。
↓
【4】錆止塗料を塗る
「カーボマスチック15/ジャパンカーボライン社」を使用。
この錆止塗料は約10年前,新潟県の米田塗装さんに教えてもらい,
曽根塗装店の現場では過去に2回だけ使いました。
・最下等の錆止塗料だとキロあたりたぶん200円くらい
・手軽で乾燥が早く,“エポ”というイメージが良いので
昨今ペンキ屋の標準になりつつある
弱溶剤1液形エポキシ錆止塗料だと500円くらい
(「1液ハイポンファインデクロ」「エスパーワン」
「ザウルスEX」など)
・曽根塗装店の標準品の2液形で1000円前後
(「エポオールマイルド」「エポックマイルド#2000」)
で,「カーボマスチック15」は2000円を超えます。
(アメリカ製ということもあるかもしれませんが)
しかも,まるで防水材のように ねばねばどろどろ,
だから,仕上がりがゴテゴテ,
その上,2液を混合してから使えなくなるまでが2時間,
さらに,塗り重ねが出来るまで24時間,
おまけに,開缶したら3ヶ月以内におシャカ。
意地でも長持ちさせたいからこの際 赤字になってもいい,
くらいの玉砕精神が無いと使えません,私的には。
でも,厚い。
塗るというよりは,刷毛で持って行って置いていきながら均す,
そんな感じのネタですから。
注意点として,以上【2】〜【4】は当日以内にやること。
塗る前に雨が降ったり夜露に当ったりすると,
(厳密に言えば空気中の水分でも)錆が生じてしまいますから,
脱脂や目荒らしをしたら当日以内に塗膜で覆っておくのが原則です。
全体を【4】まで1日でやるのが不可なら,
1日で出来る分ずつ,分割してすすめる。
それから,ローラー塗りじゃなく,ハケ塗りすること。
但し,ローラーでたっぷり配ってハケで均すならOK。
早く終わらせたくて無闇にローラー使いたがるやつがいますが
ローラー塗りだと塗膜が凹凸になり,凹部が薄いからダメ。
(鉄橋の塗装ではローラーNG,ハケ塗り限定の場合があるそうです)
「カーボマスチック15」1回目「アルミニウム」の塗装中。
↓
【5】もう1回,錆止塗料を塗る
もちろん,またネバネバな「カーボマスチック15」です。
粘度が高いだけに,かすれやすいし,
1回塗りだと,エッジがどうしても薄いので2度塗りします。
「カーボマスチック15」には何色か色の種類があるので,
1回目と2回目を色違いにした方がわかりやすいでしょう。
「カーボマスチック15」の2回目「レッド」
(というよりはメタリックピンク)の塗装後。
↓
【6】上塗塗料を塗る
通常,エポキシ樹脂塗料は紫外線に弱いです。
曽根塗装店では下地が透けるとわかるように
わざと なるべく白に近い錆止塗料を使うので,
国産の錆止塗料は上塗りせずに放置すると徐々に黄変してきて,
紫外線にやられてるんだなー,と実感できます。
しかるに,「カーボマスチック15」はエポキシ樹脂塗料のくせに
上塗兼用という変わり者で,そのままでもOKなんです。
なので,上塗は省いても構わないとは思いますが,
同社の強溶剤2液形ウレタン樹脂塗料「カーボライン134HS」を
1回だけ上塗。(ウレタンだけど弱2シリコンよりはるかに高価)
米田さんに相談したら,上塗がシルバーなら,
1回でも透けないで仕上がるだろうというので,上塗1回で決定。
上塗はまだMさんから写真が送られてきていませんが,
そろそろ終わってる頃ではないかと思います。
---------------------------------------------------
さて,今の住宅ではトタン以外,
外部に鉄が使われていることはほとんどありませんが,
希にベランダや階段などで露出鉄部の塗装がある場合,
需要と供給のバランスで育まれた【世間並み仕様】では前記の通り
脱脂はテキトー,目荒し 無し,
ただなんとなく色が付く程度の安物の錆止塗料を1回。
その上に,SOPとか弱溶剤1液ウレタン樹脂塗料みたいな
これまた安物の上塗塗料(SDスーパーホルスとかHi-CRとか
1液ファインウレタンとか1液マイルドウレタンとかエコレタンとか)
を1回だけ塗って,おしまい。
まあだいたいそんなところが定番です。
雨ざらしだったら,錆が出るまで,もっても3年でしょう。
で,【1】〜【6】の仕様だと,
たぶん【世間並み仕様】の7倍以上の厚みが付きます。
塗る前に脱脂・目荒らしが しっかりしてあれば,
自然に剥がれるということはまず有り得ないし,
ぶつけて剥げない限りは10年経っても錆は出ないと思います。
---------------------------------------------------
ちなみに,
【世間並み仕様】の鉄骨をもつように塗替えろといわれたら,
害にしかならない,しょーもない既存塗膜を一旦全部剥がすしかない
というのが私の経験的結論です。
リセットしたあとに,私の塗膜だけで包みたい。