2009年09月03日
左官工事(花壇の下地補修)
今日も降るんだか降らないんだかはっきりしない天気で,
かなり迷いましたが,休工としました。
久しく工事記録的な投稿をしていなかったので
溜まっている見積書作成に専念する前に更新をば。
(以下,長いです)
現在,神奈川県川崎市宮前区で施工中の,和風のお宅です。
↓
昨年9月,塀と花壇の塗り替えのご依頼をいただきました。
塀は掻き落とし左官仕上げ,
花壇はリシン吹き付け塗装仕上げです。
↓
花壇は,「塗装が劣化してる」というレベルじゃなく,
モルタルがかなりキテます。
↓
ちょっと補修して塗る程度では済まない感じなので
左官補修,できれば,内側に防水処置をした方が良いでしょう
というお話をして,今年7月中旬に左官工事先行で着工。
着工直前に打ち合わせにお伺いすると
内側の土が全撤去されていました。
↓
土の撤去は造園業者に依頼されたものと思っていたら,
なんと,施主さんがご自身で行なわれたそうで,
土嚢袋100枚分(!)だったそうです。
「土」って,引っ越しの時の荷物のように,
移動すると,こんなに?と思うくらい多いんです,不思議と。
この状態は,
↓
ブロック積みの上の,仕上げのモルタルが割れて
浮いているのだろうと思っていました。
が,土が全撤去されて内側を見ると,
(鉄筋を組んで型枠を作ってコンクリートを流し込み,
固まってから型枠を外す→)「鉄筋コンクリート」
であることが判明。
どちらにしてもモルタル層がダメなので撤去。
業界用語で「ハツる」といいます。
↓
鉄筋コンクリートは型枠の固定に鉄のボルトを使用します。
コンクリートが固まってから型枠を外しますが,
ボルトは貫通している状態で本体に残ります。
健全なコンクリートはアルカリ性なので
残っていても中で錆びることはないのですが,
鉄が露出したところはワイヤーブラシでこすって錆止塗料を塗付。
↓
花壇内側の床面はほとんどコンクリートで固めてあり,
ちょっとずつ下に水が浸透していたかもしれませんが
プール状に水が溜まるような作りになっていて,
植栽には良くないそうなので,水抜きのための穴を開けました。
↓
表層のモルタルを剥がしてみると,あちこちにひび割れがありました。
ひび割れはコンクリートを貫通しています。
↓
ひび割れから水が浸透して芯の鉄筋に達すると錆びてしまい,
鉄が錆びると膨張してコンクリートを割る力になるのでマズイです。
それに,仕上げの塗装は内側から水で押されるとものすごく弱く,
簡単に膨れたり剥がれたりしてしまいます。
完工後には,また土を入れることになるので,
水が浸透しないように,ウレタン防水を行ないました。
↓
ウレタン防水は全く水を通さず,乾いても弾力性があります。
↓
上の写真の赤枠のアップです。
補強のためネットを仕込んであります。
↓
ウレタン防水まで完了した状態です。
↓
ウレタン防水の上から
「カチオンフィラー」という密着の良い下地処理材を塗付。
↓
巾木部分にプラスチック定規を取り付けます。
↓
モルタル下塗です。
↓
上面には,木製の定規を仮止めして
モルタルを下塗します。
↓
そのあと,上面にもプラスチック定規を取り付けます。
↓
正面には,割れないようにガラス繊維のメッシュを仕込みます。
↓
これがガーゼ状のガラス繊維です。
↓
メッシュ埋め込みのアップ
↓
モルタル仕上げ塗りです。
↓
巾木部分も仕上げ塗りをして終了。
↓
この状態が
↓
こうなりました。
↓
この状態が
↓
こう。
↓
施工前後だけ見ると,その間の工程,
ハツりとかウレタン防水とかガラスメッシュとか
そういうあれこれは,まったくわかりません。
部外者には,仕上がりから想像が付かないところに
えらい手間がかかっているわけですが,
ただ上っ面に薄くモルタルを塗っただけでも
同じように仕上がるでしょう。
左官工事がヘタクソな場合,
こういう角度から見ると,直線でないのですぐバレます。
↓
申し分ない仕上がりです。
ところがしかし,「笠木」が無いんです orz
左官担当者としては,「復旧」と考えていたので,
笠木を付けなかったわけですけど,
外側の垂直面のみリシンを吹き付け塗装する私としては,
汚れ低減,剥離防止のために笠木が欲しかったのです。
打ち合わせ不足でした m(_ _;)m
すぐに連絡して,笠木を付けてもらうことにしました。
まずは接着増強剤を塗付。
↓
接着剤でプラスチック定規を取り付けます。
↓
モルタル塗り。
↓
笠木完成。
↓
--------------------------------------------------------
以上の左官工事は,分離発注で
「防水職人としての経験もあるタイル屋さん」に
お願いしました。
なんで「左官業者」に依頼しなかったのかというと
(いいかげんな左官屋なら何軒も知ってますが)
“ちゃんとやる”左官業者の知り合いがいないからです。
私が現場に行けなくても安心して任せられる他職種は
遺憾ながら滅多にいませんが,この方は希な例外です。
(今回の写真のほとんどは私でなく,この方が撮影したものです)
このタイル屋さんのHPは無いので,
神奈川,東京で“ちゃんとやる”左官業者
(&タイル業者)をお探しの方,
ご連絡いただければ ご紹介いたします。
かなり迷いましたが,休工としました。
久しく工事記録的な投稿をしていなかったので
溜まっている見積書作成に専念する前に更新をば。
(以下,長いです)
現在,神奈川県川崎市宮前区で施工中の,和風のお宅です。
↓
昨年9月,塀と花壇の塗り替えのご依頼をいただきました。
塀は掻き落とし左官仕上げ,
花壇はリシン吹き付け塗装仕上げです。
↓
花壇は,「塗装が劣化してる」というレベルじゃなく,
モルタルがかなりキテます。
↓
ちょっと補修して塗る程度では済まない感じなので
左官補修,できれば,内側に防水処置をした方が良いでしょう
というお話をして,今年7月中旬に左官工事先行で着工。
着工直前に打ち合わせにお伺いすると
内側の土が全撤去されていました。
↓
土の撤去は造園業者に依頼されたものと思っていたら,
なんと,施主さんがご自身で行なわれたそうで,
土嚢袋100枚分(!)だったそうです。
「土」って,引っ越しの時の荷物のように,
移動すると,こんなに?と思うくらい多いんです,不思議と。
この状態は,
↓
ブロック積みの上の,仕上げのモルタルが割れて
浮いているのだろうと思っていました。
が,土が全撤去されて内側を見ると,
(鉄筋を組んで型枠を作ってコンクリートを流し込み,
固まってから型枠を外す→)「鉄筋コンクリート」
であることが判明。
どちらにしてもモルタル層がダメなので撤去。
業界用語で「ハツる」といいます。
↓
鉄筋コンクリートは型枠の固定に鉄のボルトを使用します。
コンクリートが固まってから型枠を外しますが,
ボルトは貫通している状態で本体に残ります。
健全なコンクリートはアルカリ性なので
残っていても中で錆びることはないのですが,
鉄が露出したところはワイヤーブラシでこすって錆止塗料を塗付。
↓
花壇内側の床面はほとんどコンクリートで固めてあり,
ちょっとずつ下に水が浸透していたかもしれませんが
プール状に水が溜まるような作りになっていて,
植栽には良くないそうなので,水抜きのための穴を開けました。
↓
表層のモルタルを剥がしてみると,あちこちにひび割れがありました。
ひび割れはコンクリートを貫通しています。
↓
ひび割れから水が浸透して芯の鉄筋に達すると錆びてしまい,
鉄が錆びると膨張してコンクリートを割る力になるのでマズイです。
それに,仕上げの塗装は内側から水で押されるとものすごく弱く,
簡単に膨れたり剥がれたりしてしまいます。
完工後には,また土を入れることになるので,
水が浸透しないように,ウレタン防水を行ないました。
↓
ウレタン防水は全く水を通さず,乾いても弾力性があります。
↓
上の写真の赤枠のアップです。
補強のためネットを仕込んであります。
↓
ウレタン防水まで完了した状態です。
↓
ウレタン防水の上から
「カチオンフィラー」という密着の良い下地処理材を塗付。
↓
巾木部分にプラスチック定規を取り付けます。
↓
モルタル下塗です。
↓
上面には,木製の定規を仮止めして
モルタルを下塗します。
↓
そのあと,上面にもプラスチック定規を取り付けます。
↓
正面には,割れないようにガラス繊維のメッシュを仕込みます。
↓
これがガーゼ状のガラス繊維です。
↓
メッシュ埋め込みのアップ
↓
モルタル仕上げ塗りです。
↓
巾木部分も仕上げ塗りをして終了。
↓
この状態が
↓
こうなりました。
↓
この状態が
↓
こう。
↓
施工前後だけ見ると,その間の工程,
ハツりとかウレタン防水とかガラスメッシュとか
そういうあれこれは,まったくわかりません。
部外者には,仕上がりから想像が付かないところに
えらい手間がかかっているわけですが,
ただ上っ面に薄くモルタルを塗っただけでも
同じように仕上がるでしょう。
左官工事がヘタクソな場合,
こういう角度から見ると,直線でないのですぐバレます。
↓
申し分ない仕上がりです。
ところがしかし,「笠木」が無いんです orz
左官担当者としては,「復旧」と考えていたので,
笠木を付けなかったわけですけど,
外側の垂直面のみリシンを吹き付け塗装する私としては,
汚れ低減,剥離防止のために笠木が欲しかったのです。
打ち合わせ不足でした m(_ _;)m
すぐに連絡して,笠木を付けてもらうことにしました。
まずは接着増強剤を塗付。
↓
接着剤でプラスチック定規を取り付けます。
↓
モルタル塗り。
↓
笠木完成。
↓
--------------------------------------------------------
以上の左官工事は,分離発注で
「防水職人としての経験もあるタイル屋さん」に
お願いしました。
なんで「左官業者」に依頼しなかったのかというと
(いいかげんな左官屋なら何軒も知ってますが)
“ちゃんとやる”左官業者の知り合いがいないからです。
私が現場に行けなくても安心して任せられる他職種は
遺憾ながら滅多にいませんが,この方は希な例外です。
(今回の写真のほとんどは私でなく,この方が撮影したものです)
このタイル屋さんのHPは無いので,
神奈川,東京で“ちゃんとやる”左官業者
(&タイル業者)をお探しの方,
ご連絡いただければ ご紹介いたします。
コメント一覧
1. Posted by 和田タイル 2009年09月07日 07:21
ブログ拝見いたしました。
ご期待に添えるよう、自分に負けないよう、
精進してまいります。
ご期待に添えるよう、自分に負けないよう、
精進してまいります。
2. Posted by T- 2009年09月09日 11:37
いい仕事してるねぇ
施主さんも納得しているはず
曽根さんが信頼を寄せるのも分かる
きっと自分より一世代は若い職人さんだと思うけど
曽根さん含めて ぜひ頑張ってほしい
施主さんも納得しているはず
曽根さんが信頼を寄せるのも分かる
きっと自分より一世代は若い職人さんだと思うけど
曽根さん含めて ぜひ頑張ってほしい
3. Posted by 店主 2009年09月09日 16:47
コメントありがとうございます。
どなたかは存じませんが,左官屋さんでしょうか?
今回の左官工事に関しては,
実は,当初2通りの見積書が提出されました。
結果,施主様が選ばれたのは,このA仕様でした。
どんなに善かれと考えて作った見積書であっても
依頼者にその価値が認められなければ
「絵に描いた餅」で終わりますから,
この仕事は施主様の選択眼の反映でもあります。
もう一つ,裏話を書きますと
コテ塗りを担当したのはHさんという人で,
本職はタイル職人である和田さんが
「兄弟子」と形容するベテランの左官職人です。
Hさんからは一服の時間に擬木やコテ絵の話を
聞かせてもらいました。
その帰りの車の中で,ウチの32歳の相方が
「今の職人は職人じゃなくて作業員でつね」
と言ったので「そうだなー」と同感した私でした。
どなたかは存じませんが,左官屋さんでしょうか?
今回の左官工事に関しては,
実は,当初2通りの見積書が提出されました。
結果,施主様が選ばれたのは,このA仕様でした。
どんなに善かれと考えて作った見積書であっても
依頼者にその価値が認められなければ
「絵に描いた餅」で終わりますから,
この仕事は施主様の選択眼の反映でもあります。
もう一つ,裏話を書きますと
コテ塗りを担当したのはHさんという人で,
本職はタイル職人である和田さんが
「兄弟子」と形容するベテランの左官職人です。
Hさんからは一服の時間に擬木やコテ絵の話を
聞かせてもらいました。
その帰りの車の中で,ウチの32歳の相方が
「今の職人は職人じゃなくて作業員でつね」
と言ったので「そうだなー」と同感した私でした。
4. Posted by T- 2009年09月22日 14:41
そっかー 作業員とみてしまえばいいのか
寂しい話だね 技量は落ちて来ているよね全般的に
これはという納まりは暫らく見たことがない
高い技量を持ち合わせた職人さんと現場を共にする機会は
大事にしてほしい。
T- は大工職上がりの現場管理者です
寂しい話だね 技量は落ちて来ているよね全般的に
これはという納まりは暫らく見たことがない
高い技量を持ち合わせた職人さんと現場を共にする機会は
大事にしてほしい。
T- は大工職上がりの現場管理者です